柊と書いて「のえる」と読む。


 これは彼女の両親が考えた、完全かつ短絡的な当て字である。

 なぜなら、彼女の誕生日が12月25日、クリスマスだから。

 とはいえ、ノエルは本来フランス語で「クリスマス」という意味を指し、
 丸太のケーキで有名なブッシュ・ド・ノエルのブッシュが「木」を意味する。

 だったら柊はブッシュかというとそうではなく、クリスマスツリーに用いられるのはもっぱらモミの木である。

 柊は、そのツリーのてっぺん近くや当日のあらゆる場所で飾り付けられる、
 たくましい刺と作り物じみた濃い緑が人目を引く、イカニモ固そうな無骨な葉と、
 南天に勝るとも劣らぬ対照的な赤の実が映え、
 しばしばベルが添えられたりするあれである。

 因んでないことにはならないけれど―――いや、因んでいようがいまいが、

 柊は自分の名前があまり好きではない。