誰も信じない

今振り返っても、それだけ苦しい状況なのに、なぜすんなり話せたのかわからないの。

あの時の私は、どこか感覚が麻痺していたのかな?

それとも人を傷つけることに、平気になってしまったのかな?



わからない。


「一樹。あのね…。」


「どうかした?」


「私、一樹とも付き合えない。」


「は?」


一樹は『信じられない』という口調だった。

私は一樹の表情を見るのが怖くて、ずっとカシスオレンジが入ったグラスを見つめていた。