誰も信じない

「この海は世界に繋がっているんだよね?」


「そうだな。」


これだけ大きな海を見つめていると、私がとっても小さく感じられる。

一樹を好きになる前に、ずっと誰も信じられなかったし、信じるのがすっごく怖かった。誰とも接しないつもりでいた。



あの頃の苦しみや悩みが、ものすごくちっぽけでくだらなく感じてきたの。


「自然ってすごいな。敵わないもん。どんな悩みも、海を見ていると吹き飛ぶのは、自然からの見えない力があるんだろうね。」


私の言葉に返事をする代わりに、一樹は私の肩に手を回して肩を抱いてくれた。

一樹の手から、温かさが伝わってくる。



私は頭を一樹の肩にもたれ、ずっと



水平線を、

水面を、

風が起こす小さな波を見つめていた。