俺と初めての恋愛をしよう

週明けの月曜日、また一週間が始まる。
先週末の歓迎会は後味の悪いものだった。今日子のみならず、それは後藤も同じだろう。だが、今日子にはそこまで気遣いをする余裕はなかった。
いつもは何も感じない日曜日の夜も、今回だけは違った。会社に行きたくない。本気でそう思ってしまった。
病気を口実に休んでしまおうかとも思ったが、入社以来そんなウソをついて休んだことなどない今日子が出来る筈もなく、重い気持ちのままの週末を過ごした。
結局いつも通りに朝、起きた。
今日子は毎朝、どの社員よりも早く出社し、デスク回りを拭き、給湯室でお湯の準備をしている。今日子がやっていると気づかれないためだ。一通り終えると、バッグを持ち自分だけの秘密の休憩所でコーヒーを飲んでいる。社員が出社してくる頃合いをみて合流し挨拶をする、こうすれば、優等生にもならず、陰口も言われない。誰がしているのかわからないからだ。
ならば、そんなことをしなければいい。そう思われても仕方がないが、新入社員の頃、女性から見てとても素敵な先輩社員がいた。その人がそうしていたことを、真似したのだ。気持ちがいい。それがまず初めに感じたことだった。評価を上げようとも、褒められようとも思っていない。今日子はそこまで計算高くはない。むしろ不器用だ。人間関係を築くのは苦手であるが、部署の仲間は大事だとも思っている。その人たちに気持ちよく仕事をしてもらいたい。ただそれだけなのだ。
今日子は、一息つくと、いつも通りに出社した社員と挨拶を交わし、後藤とも挨拶をした。

「おはようございます」
「おはよう」

歓迎会の一件があったからか、不機嫌な声で返される。今日子にはこれくらいが丁度いい。深く心に侵入することを拒むこともないからだ。
今日子は、重い気持ちを引きずってはならないと、後藤に朝のコーヒーを入れた。
昔の様に、女子社員がお茶を入れることはなくなった。この部署は大所帯だが、女子が10人もいない。自分もコーヒーが好きでまとめて淹れるのは苦にならず、部署分のコーヒーはまとめて落としている。それぞれに配ることまではしないが、後藤は久々の復帰なので、今日だけと決め、デスクに持って行った。