後藤の甘すぎる攻撃に、今日子は熱が出そうだと思った。
のぼせてしまうと言った方が正しいかもしれない。
今日子を何とか引き留めようと、後藤はいろいろとを我儘を言ったが、また明日があると、今日子に諭される。本当に子供に戻っている。
今日子が身支度を整え、玄関に行き、後藤が出ようとドアを開けたが、直ぐに閉めた。

「……帰したくない」

後ろに控えていた今日子を抱きしめる。
懇願する姿に切なさが伝わった。

「明日、また会えます」
「……分かった」

自宅アパートまで送ってもらうと明日の約束を確認して車を降りた。車を見送ると、とても寂しい気持ちになった。
車が見えなくなるまで見送ろうと思っていた時、後藤の車が止まった。
運転席のドアが開き、後藤が今日子に向かって走ってきた。

「部長、どうか……」

どうかしたのかと言い終わらないうちに、抱きしめキスをした。
時に激しく、時に優しく、永遠に終わらないかのようなキスに何も考えられなくなった。

「おやすみ」

唇を離すと、熱く、甘い視線で今日子を見つめた。

「おやすみなさい」

後藤は、今日子を離すと、帰れなくなるから先に家に入るようにと言われ、後藤の傍を離れ、アパートに入った。
今までずっと一人でいた。そのことに全然寂しさは感じず、むしろ交わらないことが快適でもあった。後藤がいないと何もできない自分になってしまったらどうしよう。恋愛って難しいものなのか? 今日子には、全てが初めて覚える文字の様に大変なことばかりだった。