懇願する今日子がかわいそうで、後藤は強く抱きしめた。
「会社ではかけてもいい、でも俺の前でメガネをかけるな。お前の顔がよく見えないじゃないか」
その言葉にはっとして、後藤を押し戻す。急いで前髪を手ですき額を隠す。一つに縛っていた髪のゴムを外して、顔を隠した。
「やめてください。こんな醜い顔」
「お前の顔は醜くなんかない。愛らしく、とても綺麗な顔をしている」
「いや!! やめて!! 鼻は低いし、目だって腫れて不細工、唇だって厚くてみっともなくて……!」
「何を言っている、全部正反対じゃないか」
植草から聞いてはいたが、今日子は自分の本当の顔が分からなくなっている。
後藤は、本人の口から聞くと嘘だと思っていたことが本当だと分かった。
「嘘! 嘘よ! やめて!!」
今日子は耳をふさぎ、頭を左右に大きく振った。
そんなことがある訳がない。いくら鈍くさい今日子でも言っていることが、嘘か本当かくらいわかる。
他人と接してこなかったが、人の顔色や態度にはとても敏感だ。お願いだから、外見全てのことを出すのは止めてほしい。
特に後藤のように整った顔の人に何を言われても信じられない。忌々しい過去がまた脳裏をよぎり、お願いもう解放してと、口からついて出る。
耳を両手でふさぎ顔を振る。そしてまたも、呼吸が苦しくなってきた。
「はっ、はっ、」
いつものように口に両手を広げて、塞ぐようにする。落ち着かせようと試みるもビニールが無いとだめだ。
「林! 大丈夫だゆっくりと息をするんだ!」
ビニール袋が目に入った。ビニールを取ろうと手を伸ばすが届かない。後藤は小刻みに震える今日子を力強く抱きしめ、背中を摩った。身体が硬直し始めたらお終いだ。後藤も摩る手に、自然と力が入る。
後藤の優しい手が気持ちを落ち着かせたのか以外にも落ち着きを取り戻してきた。最悪の事態を回避できた後藤は、今日子に分からないように、息を吐く。
「ゆっくりと、ゆっくりと息をするんだ。……そうだ、ゆっくりと」
「はあ、はあ」
「大丈夫だ、俺がずっと傍にいる」
「会社ではかけてもいい、でも俺の前でメガネをかけるな。お前の顔がよく見えないじゃないか」
その言葉にはっとして、後藤を押し戻す。急いで前髪を手ですき額を隠す。一つに縛っていた髪のゴムを外して、顔を隠した。
「やめてください。こんな醜い顔」
「お前の顔は醜くなんかない。愛らしく、とても綺麗な顔をしている」
「いや!! やめて!! 鼻は低いし、目だって腫れて不細工、唇だって厚くてみっともなくて……!」
「何を言っている、全部正反対じゃないか」
植草から聞いてはいたが、今日子は自分の本当の顔が分からなくなっている。
後藤は、本人の口から聞くと嘘だと思っていたことが本当だと分かった。
「嘘! 嘘よ! やめて!!」
今日子は耳をふさぎ、頭を左右に大きく振った。
そんなことがある訳がない。いくら鈍くさい今日子でも言っていることが、嘘か本当かくらいわかる。
他人と接してこなかったが、人の顔色や態度にはとても敏感だ。お願いだから、外見全てのことを出すのは止めてほしい。
特に後藤のように整った顔の人に何を言われても信じられない。忌々しい過去がまた脳裏をよぎり、お願いもう解放してと、口からついて出る。
耳を両手でふさぎ顔を振る。そしてまたも、呼吸が苦しくなってきた。
「はっ、はっ、」
いつものように口に両手を広げて、塞ぐようにする。落ち着かせようと試みるもビニールが無いとだめだ。
「林! 大丈夫だゆっくりと息をするんだ!」
ビニール袋が目に入った。ビニールを取ろうと手を伸ばすが届かない。後藤は小刻みに震える今日子を力強く抱きしめ、背中を摩った。身体が硬直し始めたらお終いだ。後藤も摩る手に、自然と力が入る。
後藤の優しい手が気持ちを落ち着かせたのか以外にも落ち着きを取り戻してきた。最悪の事態を回避できた後藤は、今日子に分からないように、息を吐く。
「ゆっくりと、ゆっくりと息をするんだ。……そうだ、ゆっくりと」
「はあ、はあ」
「大丈夫だ、俺がずっと傍にいる」



