後藤は、ハンドルを握る手を片方外し、今日子の頭を愛おしそうに撫でた。
その手の温もりが、子守歌のようにも感じる。
後藤に寝てもいいと言われたが、必死で起きていた。だが、日頃の睡眠不足もたたって、今日子の頑張りは無駄になった。
夜景が綺麗で、眺めていた目は、すっかり閉じていた。
走る車のエンジン音だけが車内を包む。暫くすると今日子の静かな寝息が聞こえてきた。
植草の言う通り、優しく接していることが出来ているだろうか。
後藤は隣に寝ている今日子を感じながら、そう思った。
助手席も初めて、ドライブも初めて、鎌倉も初めて。これからの今日子の初めてが自分と共にあることを心から後藤は願った。
緊張しているのは今日子だけではなかった。後藤もらしくなく緊張をしていた。
今日子は楽しめるだろうか? 悲しまないだろうか? 傷つけはしないだろうか?
今日子はガラスだ。いきなり落とすと割れる、いとも簡単に。後藤はそれだけはしたくない。柴野の言葉が頭をよぎったが、自分の選択に間違いはない。後藤は隣ですやすやと寝ている今日子を見つめた。
134号線を走り、若宮大路を通り海に出た。人通りもなく、とても静かだ。車を止めて、今日子を見る。ぐっすり寝ている様子を見て、随分と無防備だなと思う。
植草が伊達メガネだと言っていたことを思い出し、今日子のメガネを取る。
額、目元を隠す前髪を少し避ければ形の良い額が現れた。透き通るような白い肌が夜の月明かりに照らされてとても綺麗だった。唇を近づけ今日子に触れようとし、ハッとする。何をしているんだ、寝込みを襲う程抑えきれないのか。後藤は自分を戒め深呼吸をして今日子を起こす。
「林。着いたぞ?」
「ん。……はっ!ごめんなさい。寝てしまって、私ったら……」
動揺を隠しきれず、ひたすら謝る。
その手の温もりが、子守歌のようにも感じる。
後藤に寝てもいいと言われたが、必死で起きていた。だが、日頃の睡眠不足もたたって、今日子の頑張りは無駄になった。
夜景が綺麗で、眺めていた目は、すっかり閉じていた。
走る車のエンジン音だけが車内を包む。暫くすると今日子の静かな寝息が聞こえてきた。
植草の言う通り、優しく接していることが出来ているだろうか。
後藤は隣に寝ている今日子を感じながら、そう思った。
助手席も初めて、ドライブも初めて、鎌倉も初めて。これからの今日子の初めてが自分と共にあることを心から後藤は願った。
緊張しているのは今日子だけではなかった。後藤もらしくなく緊張をしていた。
今日子は楽しめるだろうか? 悲しまないだろうか? 傷つけはしないだろうか?
今日子はガラスだ。いきなり落とすと割れる、いとも簡単に。後藤はそれだけはしたくない。柴野の言葉が頭をよぎったが、自分の選択に間違いはない。後藤は隣ですやすやと寝ている今日子を見つめた。
134号線を走り、若宮大路を通り海に出た。人通りもなく、とても静かだ。車を止めて、今日子を見る。ぐっすり寝ている様子を見て、随分と無防備だなと思う。
植草が伊達メガネだと言っていたことを思い出し、今日子のメガネを取る。
額、目元を隠す前髪を少し避ければ形の良い額が現れた。透き通るような白い肌が夜の月明かりに照らされてとても綺麗だった。唇を近づけ今日子に触れようとし、ハッとする。何をしているんだ、寝込みを襲う程抑えきれないのか。後藤は自分を戒め深呼吸をして今日子を起こす。
「林。着いたぞ?」
「ん。……はっ!ごめんなさい。寝てしまって、私ったら……」
動揺を隠しきれず、ひたすら謝る。



