ここまできたら観念するしかない。今までの自分だったらどんなことをしてでも拒否していたであろう。今日の書類ミスのお礼だとでも思うことにする。そうすれば、自分に言い聞かせることが出来る。でも後藤にはそこまですることはなく受け入れることができた。この感情はなんなのだろう。初めて持つ感情に戸惑っていた。
二人で地下にある駐車場へと向かう。後藤の車がある場所までくると、今日子を助手席のドアを開けエスコートした。
今日子は、助手席に乗るのも初めての経験だ。父親の運転する車に乗るときも妹と後部座席で助手席は母親だ。もちろん家族以外の車に乗ることも初めての経験で落ち着かない。
後藤がエンジンを掛けるとシーベルトを締めて発進の準備をする。ぼーっとしていると、今日子の身体に覆いかぶさるように体をよこした。
びっくりしていると、「シートベルト」と言って、後藤はシートベルトを締めた。
「あ、すみません。助手席に初めて乗るものですから。シートベルトは義務ですよね、申し訳ございません、気が付かなくて」
「初めて?」
「ええ、おかしいでしょうか?」
「いや、凄くうれしいよ。じゃ行くよ」
後藤はその今日子の言葉に、うれしさを隠せなかった。
駐車場を出て、高速に乗る。夜の首都高速は夜景がとても綺麗だった。じっと外をみていると後藤が話かけてきた。
「夜景がきれいだろ?」
「はい。吸い込まれそうですね。初めてです、ドライブ」
「ドライブも初めてなのか?」
「はい」
強引な後藤に押し切られる形で出かけているが、今までそむけてきた世界を見させてくれている。もっと早く外の世界に目を向けていたら、今日子の考え方、人生観も違っていたかもしれない。ドライブ、夜景、高速。今、この瞬間ですでにこれだけを体験しているのだ。今日子にとっては素晴らしい一歩だ。
「そうか。これから鎌倉に行こうと思う。帰りはちゃんと送って行くから心配するな」
「鎌倉!? これからでは大分遅くなりませんか?」
首都高を走る簡単なドライブだと思っていた今日子は、驚く。
「いや、空いているから二時間もかからない」
「鎌倉にはよく行かれるんですか?」
「そうだな、転勤になる前はよく行っていたかな? 好きな場所があるんだ」
「私は初めてです、鎌倉……」
「そうか、案内し甲斐があるな」
ぷつりと会話が途切れたが、動揺はなかった。緊張も切れたのか、ここの所よく寝られていなかったこともあり、眠気に襲われた。堪えていてもあくびをしてしまう。
「眠いか? いいぞ、寝ていろ。着いたら起こすから」
「い、いいえ。大丈夫です。すみません」
上司の前で、失礼なことをしてしまったと、バツが悪くなる。
「遠慮するな」
二人で地下にある駐車場へと向かう。後藤の車がある場所までくると、今日子を助手席のドアを開けエスコートした。
今日子は、助手席に乗るのも初めての経験だ。父親の運転する車に乗るときも妹と後部座席で助手席は母親だ。もちろん家族以外の車に乗ることも初めての経験で落ち着かない。
後藤がエンジンを掛けるとシーベルトを締めて発進の準備をする。ぼーっとしていると、今日子の身体に覆いかぶさるように体をよこした。
びっくりしていると、「シートベルト」と言って、後藤はシートベルトを締めた。
「あ、すみません。助手席に初めて乗るものですから。シートベルトは義務ですよね、申し訳ございません、気が付かなくて」
「初めて?」
「ええ、おかしいでしょうか?」
「いや、凄くうれしいよ。じゃ行くよ」
後藤はその今日子の言葉に、うれしさを隠せなかった。
駐車場を出て、高速に乗る。夜の首都高速は夜景がとても綺麗だった。じっと外をみていると後藤が話かけてきた。
「夜景がきれいだろ?」
「はい。吸い込まれそうですね。初めてです、ドライブ」
「ドライブも初めてなのか?」
「はい」
強引な後藤に押し切られる形で出かけているが、今までそむけてきた世界を見させてくれている。もっと早く外の世界に目を向けていたら、今日子の考え方、人生観も違っていたかもしれない。ドライブ、夜景、高速。今、この瞬間ですでにこれだけを体験しているのだ。今日子にとっては素晴らしい一歩だ。
「そうか。これから鎌倉に行こうと思う。帰りはちゃんと送って行くから心配するな」
「鎌倉!? これからでは大分遅くなりませんか?」
首都高を走る簡単なドライブだと思っていた今日子は、驚く。
「いや、空いているから二時間もかからない」
「鎌倉にはよく行かれるんですか?」
「そうだな、転勤になる前はよく行っていたかな? 好きな場所があるんだ」
「私は初めてです、鎌倉……」
「そうか、案内し甲斐があるな」
ぷつりと会話が途切れたが、動揺はなかった。緊張も切れたのか、ここの所よく寝られていなかったこともあり、眠気に襲われた。堪えていてもあくびをしてしまう。
「眠いか? いいぞ、寝ていろ。着いたら起こすから」
「い、いいえ。大丈夫です。すみません」
上司の前で、失礼なことをしてしまったと、バツが悪くなる。
「遠慮するな」



