俺と初めての恋愛をしよう

慌ただしく一礼して今日子は医務室を後にした。
午後の仕事を始めると、思いっきりむせた声が聞こえた。声のする方を見ると、後藤がコーヒーカップを手に持ち、呼吸困難になるくらいにむせ返っていた。
 後藤の近くにいた社員が駆け寄り「ふきん!」と叫ぶ。
 今日子は急いで給湯室に行き、布巾を持って後藤のデスクに走った。

「ど、どうしたんですか?」

 傍にいた社員に訪ねる。

「わかりません。急にむせ込んだので見たら、書類の上にコーヒーをこぼして……」
「すぐに拭かないと!部長大丈夫ですか?」

 布巾を任せ、今日子は後藤の背中を摩った。

「ゴホッ、ゴホッ、ぜえぜえ……はあ、はあ。あー死ぬかと思った……」
「器官に入ってしまったんですね。何を慌てて飲んだんですか」
「……いや、すまない」

よほど苦しかったのだろう、目から涙が出ていた。
「はい、これどうぞ?」

 持っていたハンカチを差し出す。

 「ああ、ありがとう」

 受け取ったハンカチで涙を拭くとようやく落ち着いたようだった。

「ふう、あー苦しかった。書類が……」
「これをまた打ちだしすればいいだけだけですか? 私がやりましょうか? 保存場所を教えてください」

 コーヒー色に染まった書類を指す。

「残業になってしまうぞ?」
「大丈夫です」
「……大丈夫じゃないよな?」
「はい?」

後藤は視線で今日子に会話をした。
今日子はその目で何を訴えているかすぐに理解する。

「あ、そうでした。申訳ございません」