「待っていろと言っている」
言うことを聞かない子供を叱るように、後藤は低い声で今日子に言った。
後藤は、デスクに鞄を置き帰る支度をしている。
やはり嫌な予感は的中した。
一緒に歩きたくない。後藤は人目を惹く容姿だ。一緒に並んだら今日子は多分顔を上げて歩けない。嫌だ、一緒に帰りたくない。また震えが出てくる。何とか帰らなくてもいい方法がないか一瞬で考えるも何も出てこない。
「すみません、ちょっと急いでいるものですから、これで失礼します」
何の理由にもなっていない言葉を発し、小走りに部署を後にした。
「林!」
後藤の呼ぶ声が聞こえたが、振り向きもしなかった。
エレベーターまでくるも待っている間に後藤が来たら捕まってしまう。そう思った今日子は、咄嗟に非常階段を下りることを思いつく。エレベーター横の非常階段を下りる。ここは13階だが上るよりも下りる方が断然楽だろう。手摺につかまりながら階段を下りてゆく。非常階段は今日子のパンプスの音がカンカンと高い音が響く。途中、降りるスピードが落ちたが、それでも今日子は、一度も休むことなく、階段を降り続けた。
途中、何度か目が回ったが、やっと一階に付き呼吸を整える。
後は駅に行くだけ、後藤は確か反対方向なはず。ビルを出れば人ごみに紛れわからないだろう。冷静に考え、歩きだしたところで強い力で腕を引っ張られた。
言うことを聞かない子供を叱るように、後藤は低い声で今日子に言った。
後藤は、デスクに鞄を置き帰る支度をしている。
やはり嫌な予感は的中した。
一緒に歩きたくない。後藤は人目を惹く容姿だ。一緒に並んだら今日子は多分顔を上げて歩けない。嫌だ、一緒に帰りたくない。また震えが出てくる。何とか帰らなくてもいい方法がないか一瞬で考えるも何も出てこない。
「すみません、ちょっと急いでいるものですから、これで失礼します」
何の理由にもなっていない言葉を発し、小走りに部署を後にした。
「林!」
後藤の呼ぶ声が聞こえたが、振り向きもしなかった。
エレベーターまでくるも待っている間に後藤が来たら捕まってしまう。そう思った今日子は、咄嗟に非常階段を下りることを思いつく。エレベーター横の非常階段を下りる。ここは13階だが上るよりも下りる方が断然楽だろう。手摺につかまりながら階段を下りてゆく。非常階段は今日子のパンプスの音がカンカンと高い音が響く。途中、降りるスピードが落ちたが、それでも今日子は、一度も休むことなく、階段を降り続けた。
途中、何度か目が回ったが、やっと一階に付き呼吸を整える。
後は駅に行くだけ、後藤は確か反対方向なはず。ビルを出れば人ごみに紛れわからないだろう。冷静に考え、歩きだしたところで強い力で腕を引っ張られた。



