「彩乃ちゃん、お疲れ様。ありがとうね。今日はランチからずーっとだったから、疲れたでしょう」
閉店直後。
あゆみさんがレジのお金を数えながら言う。
「いえ。全然大丈夫です。今日はアップルパイもいただいちゃったし、お話も聞けて楽しかったですよ」
テーブルと椅子を拭きながら答える。
「あぁ、そうそう。アップルパイね、ふた切れだけ売れ残っちゃったから、持って帰らない?」
「え、いいんですか?諒介くんと旦那さんに持って帰ってあげたらいいのに」
「いいのよ。うちは今日旦那が非番だったからね。諒介連れて、遊びに行くって言ってたの。あたしが帰ったらもう、2人とも遊び疲れて寝てるわ、きっと」
「えー、そうだったんですか?そしたらあゆみさんだけお店出て、大変でしたね。お休みしたら家族みんなで遊びに行けたのに」
「うん、でも仕方ないわ。高橋くんも陽菜ちゃんも、今日はたまたま2人ともダメみたいだったから」
陽菜は今日、彼氏と海に行くと言ってた気がする。
高橋くんは、ここのところ連日出ていたので今日は久しぶりのお休みだった。
「高橋くん、夏休みも課題が山積みだってボヤいてました、昨日」
「専門学校だと、そうよね。あたしも同じだったからよくわかる」
あゆみさんは調理師の専門学校を卒業している。
