赤い肉が剥き出しになった踵が、硬いパンプスに触れるか触れないかの微妙な距離を保ちながらの爪先立ちをしながら、ゆっくりと歩く。
そのせいで、50メートルかそこらしかない筈のコンビニまでの距離はひどく遠かった。


コンビニの前に設置されたベンチに、促さるままに座っていると、ビニール袋をぶら下げた彼が戻ってきておもむろに缶
のロイヤルミルクティーを差し出す。


「…ありがとうございます」


そしてあたしの目の前に向き合う形でしゃがみ込むと、言った。


「足、見せて」


そしてあたしの答えを待たずに、パンプスを脱がそうとする。

「え…あの、いいです!大丈夫だから…

「…これのどこが?」

今も変わらず焼け付くような痛みをもつ踵を見て、彼は言う。


「あの…自分でやるから大丈夫です」

聞こえているに違いないのに、彼はまるで何も聞こえていないような素振りでテ
キパキと手当てをする。

「あの…ほんとに…」
「でも、俺のせいだから。ごめんね。消毒液とか、売ってなかったから、応急処置だけど。ちょっと染みるよ」