「ちょっと、待っててもらえますか?着替えてくるんで…」
あたしが、ほんの少し遠慮がちに彼の目を見て言うと、彼はその二重の瞳を一度大きく見開き、そしてあたしの手を離した。
「わかった」
高橋くんが事の成り行きを、いかにも不安げな表情で見つめている。
「高橋くん、ごめんね。じゃあお願いしちゃうね」
「あ…あぁ、それはいいけど…でも」
高橋くんは、彼のほうを一瞥してからあたしを見た。
言わんとしていることは勿論汲み取ることができたけれど、説明しても理解して
もらえるかどうかは自信がなかったので、あたしもあえて何も言わなかった。
