でも、それなら一言くらい言ってくれてもいい筈だ。
昨日だって、バイトの後で家に帰ってからあたしは拓真と電話をした。
そりゃショコラは拓真の飼い犬だから、あたしに報告の義務はないにせよー
でも、それにしても拓真は言ってくれる筈だ。
あたしが、拓真と同じくらいショコラを可愛がっていることはよく知っているのだから。

ショコラのトイレを見ると綺麗に掃除されたままで、少なくとも今日はショコラがここを使っていないことがわかる。

いったいどこへ行ったんだろう。

拓真に訊いてみればすぐにわかることなのだけど、いつもいる筈のものがいるべき場所にいないこと、なおかつその理由がわからないことは、なんだかあたしの心をざわつかせる。

拓真はまだ仕事中だろうと思うと、連絡をとることも憚られ、あたしは空っぽのショコラのゲージを横目に、スーパーのビニール袋を持ち上げてキッチンへ向かった。

今日は鍋にしようと、野菜やキノコをたくさん買い込んできた。
シチューにしようかと迷ったのだけれど、晩酌をする拓真のことを考えたら、鍋のほうが合うと思って決めた。

適当に安い野菜をたくさん買ってきたけれど、何鍋にするかは特に決めていない。
温かいもので、お酒とも相性が良いものを考えたら鍋だったというだけで。