拓真と一緒によく行く、拓真のマンションから1番近いスーパーで買い物をしてからマンションに向かった。

ついいつもの癖で、「503」と、部屋番号を押してしまいそうになる。
大事にしまった鍵を取り出して、オートロックの番号盤の隅の鍵穴に差し込んだ。

自動ドアが当たり前に開き、あたしは何食わぬ顔をして中に入る。
何度も来た場所なのに、いつもと違う手順で入るというだけで少しドキドキするんだなぁ、なんて思いながらエレベーターに乗り、5階へと上がる。

503と書かれた銀色のプレートが掲げられたドアの鍵穴に、また鍵を差し込む。

カチャ、という音と共に、感じる手応え。

…開いちゃった。


予想通りのことが起きているだけなのに、あたしの胸は高鳴っている。

ドアを開けて中に入ると、内側からまた鍵をかける。
いつもは拓真がしてくれる作業を全て、今日は自分でしている。

「お邪魔しまーす…」

しんと静まり返っている部屋の中に、
あたしの独り言が響いた。