そんなお兄ちゃんの近くにいたら、嫌でもあたしの存在なんて霞んでしまう。
それはきっと、無理のないことだと今になって思っている。
目に見えて褒められてしかるべきことを、いとも容易くやってのけるお兄ちゃんに比べれば、あたしにはこれといって褒めるべきところが見つからなくても当然だった。
親に愛情を注いでもらえなかったとは思っていないけれど、いつだってあたしは二の次だったのだ。
たまたま発表会で主役に抜擢されても、それが披露できずに終わる。
必死に練習した結果レギュラーに選抜されても、肝心なところでアクシデントに見舞われる。
要するに運が悪いのだけど、運だって立派な才能のうちだ。
両親は、「頑張ってたのに残念だったね」と、あたしに労いの言葉をかけてはくれたけれど、あたしはそれを言われるたびに少なからず惨めな気持ちになった。
そんなことが繰り返されるうち、いつからかあたしは、頑張っても無駄だと思うようになってしまった。
劣等感は、いつでもあたしに重くのしかかる。
