「…別れたのは、俺のせいなんだ」
「…………」
「あいつがーミナミ、って言うんだけどーたぶん1番辛かったときに、俺が支えてやれなかった。っていうのが、ずっと、忘れられなかったんだ。今も好きとかじゃなくて、そういう未練とはまた別の…後悔っていうか」
彩乃は、腑に落ちない表情を浮かべながら俺の言葉を待っている。
俺は、言い方を変えた。
「その、ミナミのね。お父さんが、亡くなった。交通事故で」
彩乃が、息を飲んだ。
ミナミは、父子家庭だった。
母親は、生きてるか死んでるかもわからない、と、ミナミは笑っていた。
その分、ミナミの父親に対する愛情や尊敬はとても大きなもので、俺はいつもそんなミナミをファザコンとからかっていた。
まだ、50代前半だったと思う。
その若すぎる、そして全く予期していなかった死に、ミナミは壊れた。
「壊れた」という表現が、1番適切だと思う。
もともと、精神的に不安定なほうだったミナミは、そのショックに耐えることができなかったのだ。
