「彩乃のこと、気にしてたよ」
「え?」
「あいつ、元気?って」
「…挨拶がわりみたいなもんでしょ、ただの」

あたしは、窓の外を見た。
日が少しずつ、傾き始めている。

「そういうんじゃ、ないと思う」
「じゃあ、なに?」
「なんていうか…こんなこと、今更言っても仕方ないけどさ。優弥にも、あったんだと思うな。彩乃に言いたかったのに、言えなかったこと」
「……………」
「だから、まだ、残ってるんじゃない?彩乃のことが」
「……………」


今更、どうして陽菜はそんな話をするのだろう。
優弥とのことはとっくに終わっていることで、ましてや、もうあたしには拓真がいると言うのに。

あたしが黙っていると、たぶん陽菜はあたしの想いを読み取ったのだろう。

「ま、しょうがないか。彩乃にはもう拓真くんいるし」
「…そうだよ。優弥は、もう関係ない」
「うん、だよね。ごめん」
「あ、見せてよ!拓真くんの写真」
「えー?前見せたじゃん」
「だってあれは、横顔だったし。もっとちゃんと映ってるやつ、ないの?」