屈んだときにTシャツの胸元から覗く谷間とか、ショートパンツから伸びる白い太ももとか、髪の毛をまとめたときに見えるうなじとか。

そんなちょっとしたきっかけですぐに崩れそうになる、俺の頼りない理性を必死で保ち続けてきただけで、最初から彼女の前では余裕なんて微塵もない。

「…あたしだって」

少し声を震わせながら、彼女が言う。

「…本当は、一緒にいたい」

彼女は、言葉とは裏腹に、俺の腕を力ずくで振りほどくと俺の方に向き直る。

「でも、あたしは…あたし、拓真くんみたいに、できないの」
「え?」
「拓真くんみたいに、大人じゃないから、いつも余裕ないし、こういうときどうしたらいいのかも、全然わかんないの」

今にも泣き出しそうな表情だった。

「…俺だって、彩乃ちゃんが思うほど大人じゃない」
「だって、でも、もうなんか、最初と違う」
「え?」
「最初はもっと、緊張バリバリだったのに、なんか最近全然だし、あたしなんかいつもずっとドキドキしてて、そんな風にはできないもん」
「え?っと…?」

なんだか論点がズレている気がして、俺は頭を整理する。

「…でも、一緒にはいたいんでしょ?」

俺の問いかけに、彼女はコクンと頷く。

「…なら、それでよくない?いたらいいじゃん、一緒に」

納得していない彼女は、それでもなお食い下がる。

「…そうなんだけど、そうじゃなくて」
「俺だって、今も緊張してるし、ドキドキしてるよ?ダメなの?」
「…ダメじゃないんだけど」