「なんか、あの、振り回される感じっていうの?…あれ、苦手で。なんか、陽菜もそうだったけど、みんな普通に恋愛楽しめてて羨ましかったよ」
「でも、優弥と付き合ってるときそんな辛いようには見えなかったよ?」
「…うん。楽しいことも、勿論いっぱいあったから。だからまぁ、引きずってるのも多少あるかも。そう言われてみるとね」

あたしは、上手に自分の感情を言葉にすることができない。
それはたぶん、小さいときから、感情を表にあまり出さないように生きてきたせいだと思う。
自分で意図してそうしたわけではないけれど、気付いたときにはそれがもう、あたしになっていた。
そうなった理由も、自分ではなんとなくわかっている。

「あ、ごめん。ちょっと電話出ていい?」
「どうぞ」

陽菜が電話に出る。
その口調で、相手が彼氏だとわかる。
陽菜はたぶん、無意識だとは思うけど彼氏と話すとき、いつもより少しだけ柔らかい口調になる。

手持ち無沙汰になったあたしは、ドリンクバーに飲み物を取りに立った。
まだ、口の中が甘ったるい。


ウーロン茶をグラスに注いで席に戻ると、陽菜の電話は終わっていた。

「ごめんね」
「ううん、全然。崇司(たかし)くんでしょ?」
「うん」
「大丈夫?」
「…うん、ごめん。あたし、もうちょいしたら出ていいかな?」
「いいよ。待ち合わせ?」

あたしが訊くと、陽菜は少しだけ罰が悪そうに頷いた。