「…あたしにも来るのかな。このままもし、付き合いが続いたら。そういうことで悩むときもあるのかな」
「何言ってんの。あんたはまだまだでしょ。今はそんなこと思わないでいいんだよ。楽しい時期なんだから」
陽菜は笑う。
けれどその目元はやっぱり少し寂しそうだ。
「…っていうか、付き合ってるのかな」
「は?」
「いや、付き合ってる…と、思ってるんだけど。いいのかな。間違えてないかな、あたし」
「何言ってんの?」
「だって、付き合おう、みたいに言われたわけじゃないじゃん?」
「言われたじゃん、一緒にいようって」
「……まぁ、そうか」
「疑り深いね」
「…そうかな」
陽菜たちみたいに、長い時間を一緒に過ごしていけば、あたしもいつかは何の曇りもない気持ちで彼が言う「好き」を、受け入れることができるのだろうか。
今だってもちろん、信じている。
信じては、いるのだけど。
「彩乃はさぁ…やっぱり引きずってるよね。優弥(ゆうや)のこと、さ」
陽菜は、腰近くまであるエクステの毛先をくるくるとその細くて長い指先に巻きつけながら言った。
あまりにも久しぶりに耳にしたその名前の響きに、あたしの心臓は小さく跳ねた。
