陽菜はそう言うと、遠い目で窓の外を見た。
「マンネリっていうの?それなんだろうね、きっと。最近一緒にいると絶対ってくらいケンカになるからさ」
「…長いもんね、もうどのくらいだっけ?」
「んー…もうすぐ3年?だね」
陽菜の彼は、高校の時に友達から紹介された他校のタメだ。
あたしも何度か会ったことがある。
背が高くて、ちょっとB系の彼に、陽菜は殆ど一目惚れだったと言う。
陽菜のほうから告白をして、いい返事をもらったときの陽菜の喜びようは今でもありありと思い出せる。
「まぁ、だからさ。いいなーって思っちゃうよ。今の彩乃みたいに、新しい恋にウキウキしてる感じ。懐かしいなーって。もうさ、全然ないからね。そういう新鮮さとか、ときめき的なやつ」
陽菜はぐるぐると、アイスティーをかき混ぜながらまたため息をついた。
「ときめき、なくなるの?」
「うーん…なんだろ。好きだなーってしみじみ思ったりすることはまぁたまにはね、あるっちゃあるんだけど。ときめきとかドキドキっていうのは違うな」
「でも、好きだなーって思うなら、大丈夫じゃない?」
「…それもさ、わかんなくなる。たまに」
どこでデートをしたとか、何を買ってもらったとか、こんなメールが来たとか。
彼との間に起きた小さな出来事ひとつも、まるで宝物だと言うように大事そうに、嬉しそうにあたしに聞かせてくれた、高校の制服姿の陽菜が頭をよぎる。
そう言えば最近陽菜はあたしに、彼の話をあんまりしてこなくなった。
