救ってくれたあなたに…

「さぁて…お迎えが来たみたいだから、僕は行くね！またなんかあったら、いつでも相談して。」
「あっ、ちょっと待って！かー君…」
そして、かー君は行ってしまった。
お迎え…その言葉に少し期待をしてしまう。
「神山さん！」
この声…
「先生、、、」
期待通りの人の声だ。
「どこに行ったか本気で心配した…」
先生は優しく、そして力強く私を抱きしめた。
泣いちゃいけないのに…涙が目にたまっていく。
「先生…誰からも必要とされない世界で生きたことある？」
「えっ？」
「私ね…今までそんな世界で生きてきたんだ。
お父さんにも捨てられて、お母さんにも捨てられて、親戚の人にも捨てられた。
これっぽっちも私なんか必要としてくれなかった。
毎日のように、汚れた人形みたいに私を見て扱ってた。
それでも、今耐えればきっと私に愛をくれる。必要としてくれる。そう思って精一杯、生きてきたんです。
そして、やっと先生が私を愛してくれた。
でも、先生は私の手に届かない人でした。
大好きでも、大好きで仕方なくても無理でした。
愛をもらえなかった人は、それなりの人生を歩むしかないんです。
だから、愛を知っている先生は愛をくれる人と一緒にいないとダメなんです…」
「神山…」
「だから、もうやめて。私の名前も呼ばないで…優しくしないで。先生好きなんて、女子生徒に口説き文句のように言ってるから…聞き飽きちゃいました。」
「違う！お前に言った好きは…」
「先生…目瞑って」
「えっ？」
「いいから！ほら、、、」
「あぁ…」

そして私は、先生に触れるか触れないかくらいのキスをした。
下手でごめんね、、、
でもこれが私からの愛です。

「そして、先生、、、後ろ向いてください。
私が3秒数えたら私の下の名前呼んでください。」
「分かった…」
先生が後ろを向いたのを確認すると私は大きく深呼吸をして空を見上げた。
そうして、、、
「1…2…3」


『明衣香！」