救ってくれたあなたに…

「お邪魔します...」



明衣香ちゃんが入ってきた。
あれから僕は...
最低な人間らしく生きている。


わけではなかった。
また明衣香ちゃんのために動いてしまっている。
岡島先生が学校を辞めないように署名をしてもらっている。
やっぱり...
好きな人のために行動できる自分でいたいから。




「かーくん・・・?」
「入っていいよ。」
「うん・・・」
「・・・・・・・」



2人の間に沈黙が流れる。
でも、その沈黙を止めたのは...
明衣香ちゃんだった。



「かーくん...あのね!
昇降口で言っちゃったあの言葉...
かーくんは、最低な人なんかじゃないの!
むしろ最高の人で...
どんなときも私の気持ちを分かってくれた。
辛いときはいつも隣で寄り添ってくれてて、抱きしめてくれた。
ギューって・・・・すっごく優しく・・・
だから...かーくんは...」




そこまで言って明衣香ちゃんは口を止めた。
明衣香ちゃんが顔を上げて潤んだ瞳から涙が流れるのと同時に....




「最低・・・・なんかじゃないんだ」




ゆっくりと微笑む明衣香ちゃんを見て・・・
胸がキツく締められた。





「ごめんね。僕...正直『最低』って言われて辛くてしょうがなかった。
でも最低な人間でいようって思えば思うほど。
どんどん辛くなって。
辛くなればなるほど、明衣香ちゃんのために生きていられる自分でありたいって思うようになっちゃった・・・」
「かーくん....」





明衣香ちゃんの涙...たくさん見てきたけど。
僕のために、流してくれた涙を見るのは...
初めてだな。