救ってくれたあなたに…

「方位・・・・磁針。それで毎日が楽しく生きられたらいいのにね」
「だから僕が頑張るの!明衣香ちゃんが生きる意味を見失わないように。僕が、、、」
「かー君が頑張ってくれたところで私は救われないの!」



僕の思考回路が停止した。


「えっ?」
「かー君がどんなに努力してくれても私は救われないの!逆に苦しめられるばっかなの!」
「本当・・・・に?」
「本当に。正直・・・・・迷惑なの。だからもう、私に関わらないで。」
「でも、、、、」
「かー君と一緒にいると、かー君好きな子に恨まれるから。友達減るの嫌なの。だからもう、私のことはほっといて」
明衣香ちゃんは涙を流しながら言った。
なぜか弱々しい明衣香ちゃんに僕までもが視界を涙で奪われる。
「わかったでしょ。私はこんな女。最低な女なの。こんな私と一緒にいたら・・・・かー君もダメになっちゃうよ。だからもう帰って。」
そう言うと明衣香ちゃんは下を向いた。
数秒だけ僕を映していた明衣香ちゃんの瞳の奥はなにも見えなかった。
ただただ暗闇に包まれていた。
次第に僕の心は理性で支配され始める。
「明衣香は・・・・ずりぃよ。こんだけ好きにさせといて。今さら関わるななんて無理だから」
理性が徐々に切れていく。
ふと明衣香ちゃんが顔を上げた。
その瞬間一気に僕の理性が切れた。
「かー・・・・っ」
今はなにも言わないで。
ただ僕を。
永嶋一真を受け止めて。
「かー・・・・ん。やめ・・・・ン」
僕との唇が重なるたびに明衣香ちゃんの目から涙が溢れる。
「やめ・・・・て!」
明衣香ちゃんに力強く押された。


ーーパチン


「最低。」
それだけを言い残し、明衣香ちゃんは昇降口を出ていってしまった。
僕は笑いが止まらなかった。
先生と同じことを言われてる自分にもう笑うしかなかった。
でもその笑いとは裏腹に涙が落ちる。
一粒一粒。
僕の黒い感情を流していく。


『最低』
好きな君に言われるなんて。
計算外、、、、
いや予想外だったな。