救ってくれたあなたに…

職員室の前で僕の足が止まる。
わずかに開く職員室の扉から中を覗いてみた。
すると岡島先生が手首にナイフらしき物を当てていた。
今まで止まっていた僕の足がとっさに動いた。
「先生!!」
そう言って、手首に当てていた物を床に投げた。
「永嶋、、、くん?」
「なにやってんだよ!」
「・・・・・・・」
「あんた、、、明衣香ちゃん捨てて死ねる勇気あんのかよ!好きな女、散々泣かせといて死ねんのかよ!」
「分からない、、、」
怒鳴る僕に先生は消えそうな言葉で答える。
「分からないんだ。」
「はっ?」
「分からないんだよ!どうしたら神山を幸せにできるのか。どうしたら神山の笑顔を見れるのか。全部全部、、、分かんないんだよ。
アイツを、、、神山を悲しませるくらいだったら死んだほうがマシだろ!どうせ命も長くないんだ。神山の知らないうちに死んだほうが・・・・」

――バン

職員室に大きな音が響いた。
僕が先生を殴ったのだ。
「あんた教師だろ!生徒の気持ち。好きな女の気持ちに気づいてやれよ!明衣香ちゃん悲しませてるって自覚してんなら、喜ばせるようなことしてやれよ!
なぁ!明衣香ちゃんは先生しか好きになれないんだよ!僕がどんなに頑張っても毎日明衣香ちゃんは先生のことばっか考えてんだよ。僕の姿は、明衣香ちゃんの瞳には映ってないんだ。
僕を好きになってくれる可能性なんて1%もないんだよ。明衣香ちゃんに好きになってもらえることほど幸せなことなんてない。
それほど明衣香ちゃんに愛されてても先生は死ねますか?自分のことを心から愛してくれてる人をこの世において死ねますか?」

僕がそう言うと先生は静かに俯き涙を流した。

「明衣香ちゃん、先生の痛みを僕の苦しみを消そうと自分の体を自分自身で傷つけてるんです」
「えっ?」
「先生の痛みを感じるたびにリストカットを繰り返してる。手首だけじゃなくて太股にも。」
「神山、、、」
「でもいつも死ねないから、あぁ。また生きてるって思うんだって。また死ねなかったって。
先生。僕からお願い。
こんな今の明衣香ちゃんを救ってあげられるのは先生だけだから、、、だから、、、明衣香ちゃんを救ってあげてください。
残された時間、明衣香ちゃんのために生きてあげてくだ、、、さい」

僕は頭を下げた。
そして先生の前で初めて泣いた。
床に一滴一滴涙が落ちていく。
この涙は、悲しいからじゃない。
苦しみの涙なんだ。
明衣香ちゃんを悲しませてばかりの人に負ける自分を。
大好きな人を救ってあげられない自分の。

臆病さに、、、
心のどこかで苦しみを覚えていたから。
その我慢していた僕の苦しみが先生の前で零れちゃった。
正直悔しかった。
ライバルである先生の前で泣いてしまうことが、、、
でもこれが僕が今できる精一杯のことだから。

先生、、、、
僕の想いをちゃんと覚えておいてください。