先生からのアドバイスを一通り聞き終わると、もう1度教室に入るところから練習した。


「失礼します」

「ほら!桜そこ!俺の目しっかり見ろ!」


先生の目なんか、恥ずかしくて見れないよ。

目が見れなかったら、首でもいいとか言ってたけど、やっぱりうまく見れなかった。



「あたし、ちょっとトイレ行ってくる!」


一通り先生からのアドバイスが終わると、急に立ち上がって、トイレへ走り出したくるみ。

気を遣って、私と先生を2人きりにしてくれたんだ。



電気を消し、窓を閉める先生。


こんなに近くにいるのに、すごく遠いよ。

先生に触れることは出来ても、先生の心の中までは触れられないんだ。


「先生、通信簿ありがとね!」

「ああ、通信簿なぁ!本当、俺甘いよなぁ。おおまけにまけてやったよ!」


先生と2人きりになっても、何も特別なことは話さなかった。

ただ、他愛もない会話をした。


その方がいいと思ったから……。