昼休み。

俺は、会議室であいつを待つ。


あいつとは、秋月桜。

いつも俺を見つけると、『せんせ~!』と駆け寄ってくる、俺のかわいい生徒。


そんな桜に、俺はいつも元気をもらってた。

最近、目が回るほど忙しいけど、あいつといると疲れなんて吹っ飛んじまうんだ。



なのに、最近元気がない。

原因は、田中愛梨からのいじめ。


桜が元気ないと、俺も元気出ねぇよ……。



こういう時、教師ってフリだ。

一人の生徒を特別扱いすることは出来ない。


でも、俺はもう大分桜を特別扱いしてしまっているのかもしれない。


あいつをどうしても放っておけないんだ。

いつも笑顔で元気そうに見えて、本当は誰よりも重いものを抱えてる。


いじめられているのに、『いじめられる気持ちが分かるから』と言って、愛梨たちに言い返したり、やり返したりもしない。

親にも気を遣う。


番号もメアドも教えてやったのに、一度も連絡をよこさない。

きっと、俺に迷惑をかけまいとしているのだろう。


桜は、本当に優しい奴だから……。



でも、それじゃ意味ねぇだろ?

逆にそっちの方が心配になるの、あいつ分かってんのかぁ?


夜も心配で、ろくに寝てねぇし……。