「言わないでおこうと思ってたんだけど、俺…もう無理かも。」


先生のその前置きに、疑問を感じつつ、パスタを口にする。

先生は、慣れた手つきでパスタをくるくるとフォークとスプーンを使って巻きつける。


「俺、あいつのこと悪く言える立場じゃねぇんだよ。本当は。ずっと忘れられない奴がいてさ…。」

「忘れられない奴?」


先生は、ゆっくりと頷いた。

私を見つめる先生に、恥ずかしくなって視線をパスタへ移す。


「桜。俺の方向いて」


先生にそんなことを言われたことがなかった。


顔を上げる。

先生の真剣な瞳に吸い込まれそう…。



「桜だよ。俺、ずっとお前のこと忘れられなかった…。バカだろ?」


先生はそう言って、笑った。


先生は、バカなんかじゃない。

そんなこと言ったら、私はもっとバカだよ。



これは、夢?


それとも……。