「先生、もう子供生まれたかな」


にぎやかな大通り。


私は分かっていながら、気にかけていたことをポツリと呟いた。


「5月が出産予定って言ってたんだっけ?ならもう生まれてるでしょ。」


くるみが素っ気無く言った。

その態度は『もう忘れなよ』と言っているかのようだった。


「あたしも何か食べようかなぁ…。」


くるみはそう言って、キョロキョロし始めた。

すっかりテンションの落ちた私は、視線を落として、食べかけのりんご飴を1口かじった。


「さ、桜!こっちの出店行こっ!」


突然くるみが私の手をグイッと引き、走り出した。


何をそんなに慌てているのだろう。

不審に思った私は、走りながら、後ろを振り返った。




そこには……


先生がいた。