式が終わり、みんなが帰っていったあとも、私は先生を探した。

誰もいない校舎をただひたすら走った。


先生・・

先生・・


今、すっごく会いたい。


叶わなくてもいいんだ。

この気持ちをちゃんと自分から先生に伝えたい。



『この教室、来年からもう使わないんだ』


そう言って、寂しそうに教室の物を片付けていた、先生の横顔を思い出した。


私は先生の教室へ向かった。

そして、先生の教室の前まで来たときだった。


突然ガラッと扉が開き、私はグイッと引き寄せられた。


誰かすぐに分かった。

前にもこんなことがあったね……先生。



誰もいない、薄暗い教室。

窓の外には、桜の花。


先生は、ただ黙って私を強く抱きしめた。

涙をこらえきれず、私も泣きながら先生を抱きしめ返した。


「卒業……おめでとう、桜。」


先生…泣いてる?


「ありがとう、先生。本当に……ありがとう。」

「お前、やっぱり泣いてる!」

「先生だって泣いてる!」


たくさんいろんなことがあったね。

悲しくて、辛くて、どうしようもないときも、側にいて、支えてくれたのは先生だったね。



これがきっと、先生との最後のハグ……。