愛のガチ契約

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「さっき窓から見ていた奴等もわかるように、あー今日は本校の大切な来賓の方がいらっしゃる。」

担任、鬼寺は使い慣れていなさそうな敬語を織り交ぜる。


「…相当、無理してるな。
鬼寺の奴」

優希は椅子を横に座り鞠に小声で話しかける。


「えぇ。相当、たいへんなお家柄の来賓なのね…」

鞠は雨の中、静かに水をはじいていく黒ベンツを見る。



「…しかしあの遅刻の鈴木はまだか。
おい、山口!山口優希!」

鬼寺はめんどくさそうな顔をして優希を呼ぶ。



「ぁ?…なんすか?!」

嫌みったらしく優希は返事をする。


「鈴木は休みか連絡なかったか?」

鬼寺は出席簿を開く。




「鬼寺。
飴子はどんなときでも欠席はしない。
たとえ風邪をひいても、
いくらチンケな高校でもな。」


優希は吐き捨てた。


「なっ…チンケとはなんだ!」

鬼寺は怒鳴り出す。



「ぉい…鬼寺…
来賓とかで怒鳴っちゃヤバいんじゃ…ねぇーn「なるほど」




ガラッ…

教室が冷える。



「ずいぶん、理事長が言うこととは違うじゃないか。」

眼鏡が光る。
漆黒のスーツがピシッと小さく音を鳴らす。




「飯田…さん」

鬼寺は人生終わった、という顔をして固まった。






「…ぁの…すぃません…
此処、通して…いただけ…」

後ろには髪が完全に湿りきった飴子が
ひざを曲げて扉の隙間から入ろうとしていた。



そして
とりあえず飴子に鬼寺の渇が飛ぶ。