サチはもてた。
俺の知る限りじゃ、男子生徒の間ではかなり評価が高い。

ある生徒がサチに近づく度に、俺はバカみたいに相手を睨んだ。
近寄るな、と思っていた。

サチはサチで、自分がもてるとは思ってないから、よく「私って女としてはダメなんだろうな」なんていうけど、気づかないだけで、すごく魅力的だった。

そう。
オレはサチが好きだ。
だけど、サチには言えない。
言ってしまったら、幼なじみっていう特別な関係が崩れる気がするから。
怖くて、到底言えそうもない。


――ある朝、いつものようにサチが自主朝練に行くのについていった。
毎朝7時半からだから、教室にいても暇なだけなんだけど、たまにグラウンドを眺めて、サチが手を振ってくれる。
そのときが結構好きだ。

ガタンと椅子をひく音がした。