――夏。
グラウンドに響き渡る蝉時雨れが、暑さを増幅させる。

男子生徒の大半は上半身裸で走り回っていたし、女子生徒の多くはどこから持ってきたのかタライに水を張って足をつけていた。


そんな暑さの中、あたしは部活をしてた。
10分もらった休憩中に蛇口で頭から水をかぶっている。

後ろから来たのは幼なじみの金森太一(かなもりたいち)だった。

「サチ」と声をかけられて、あたしはダルそうに振り向いて「なに?」と答えた。


「俺、明日から水城と帰るから」

「は?」

「だからサチとは帰れない」

「ちょっ……、待ってよ」

「俺ら、別につきあってるわけじゃないべ?」

「…そうだけど。だからって、なんで水城と…」

「付き合うことにしたんだわ。だから――……」