彼が好きだと言った『さんぽ』 上手に弾けるように何度も何度も練習した曲 だから、今でもこれだけは楽譜を見ずに弾ける。 「ありがとうございました」 ふぅ。終わった。 面接官がどんな反応をしているか、顔を見るのは怖いけれど、一礼をして顔を上げる。 難しい顔をして紙に何かを書いている人たちの中、真ん中に座っている女の人が口元を緩め、微笑んでくれた。 一人でも優しく笑ってくれていたらそれだけで充分。 出せる力は全部出した。 後悔は、ない。