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「俺、この曲好き。なんか元気出るよな」
そう宮下くんが言ってきたのは、高校一年の秋。
いつものように授業中寝ていた宮下くんに、ルーズリーフに取ったノートを渡した時だった。
ペラリと一枚、ルーズリーフと一緒に宮下くんの机の上に落ちたそれは、今ピアノで練習している“さんぽ”の楽譜
それを見た宮下くんは、そう言って
「ね。私も好き」
そう言った私に優しい笑みを見せて
「“進も〜進も〜”だよな?」
って歌ったんだ。
「違うし。“歩こ〜歩こ〜”だし。進も〜って何よそれ」
「え〜。“進も〜進も〜前に向かってどこまでも〜”でいい感じじゃね?」
いい感じってだけで自分で歌詞を作る彼に大笑いしたっけ。
でも、そんな彼の言葉は、彼自身を示す言葉みたいな気がしたんだよ。


