「では、最後に、今から自分の得意なピアノの曲を何でもいいですので弾いてください」
最後にピアノの実技なんて……
これまでリラックスして受けていた面接が一気に緊張してしまう。
面接官から向かって左側に座っている人から順に弾いていく。
私は最後から二番目。
ドキドキと心臓が煩いくらいに早く鼓動している。
他の人たちは緊張しないんだろうか、難しい曲を難なく弾いていく。
あっ、これショパンの子犬のワルツ
これは…聴いたことある。交響曲第何番とかってやつでしょ?
なんで皆、こんな難しい曲をスラスラと弾けるんだろう。
楽譜もなしに弾けるなんて、それだけで尊敬してしまうよ。
間違うこともなく滑らかにピアノを奏でる人たちが本当に凄いと思ってしまう。
私、場違いなんじゃない?そんな難しいクラシック音楽なんて弾けるわけない。


