コンパス〜いつもそばで〜


二人で話している宮下くんは私の知ってる宮下くんだけど、こうやってサインをしている宮下くんは、有名人みたいで、やっぱり少し遠い存在に感じる。


「ハンカチにサインしたの、初めてかも」

そう言って可笑しそうに笑う彼に、“初めて”という言葉がなんとなく嬉しく感じてしまう。


「そうなの?」

「うん。携帯とかはあったけど」

「へぇ」


「来週の試験、頑張れよ」


「あ、うん」

「前田なら大丈夫だ。絶対に」

力強いその言葉に、あなたに負けないくらい頑張ろうと強く思う。


「うん。頑張るね」

後悔しないよう、全力を出そう。






「ヒデ〜」

彼を呼ぶチームメイトの声が聞こえた。

「じゃ、行くわ」

「あっ、うん。ありがと」

「おぅ!試験頑張れよ。報告、待ってるから」

軽く手を挙げてそう返事をすると、彼はチームメイトと共にクラブハウスの中へ入って行った。



頑張ろう

強く強く、そう思った。