コンパス〜いつもそばで〜


そんな彼がサッカーをしている姿を見たのは、冬に行われた球技大会の時。


彼のプレーは群を抜いていた。

ボールを持ったら奪われない技術があった。
飄々と相手をかわし、独特の素早いドリブルでディフェンスを翻弄する。

サイドからドリブルをしてディフェンスを抜き、真ん中に切り込んでのシュートはプロのように鮮やかで、観ている人全てを魅了してた。


優勝が決まって、仲間と抱き合って喜ぶ姿は高校生らしく、無邪気な笑顔がそこにはあった。



「前田〜っ!」

目が合った時、大きな声で名前を呼び、人指し呼びを天に向かって掲げた姿は、未来で輝く彼の姿を想像して、何故か泣きそうになった。


彼が好きだ


そのことに気付いたのは、きっと、この瞬間……