コンパス〜いつもそばで〜



「今日は、16時から練習なんだって。
選手に会えるのは、その前か練習後なんだけど、練習風景も見たくない?やっぱ、折角行くんだから見れるもんは見たいよな」


車を運転しながらコウくんは独り言のように話す。

「そだね」

相槌を打ちながら窓の外を眺めていた。



「緊張してる?」

「へ?」

突然のコウくんの言葉に意味が分からなくて間抜けな声が出る。


「俺と二人っきりだから」

「んなわけないでしょ」

何を言い出すかと思えばそんなこと。コウくんと二人っきりでも緊張するわけないじゃない。

そういう関係じゃないってコウくんもよく分かってるでしょ。


「冗談だし。でも、緊張してるでしょ?」

「え?」

「16番に会えるから」

「……」


何も答えられないのは、図星だから。

緊張してる。
彼に会ってどうすることもないけれど、それでもやっぱり緊張してる。