「前田っ!」
「コウくん」
あの日曜日から二日経った水曜日。
午後イチの講義を終え、帰ろうと校内を歩いていた時、背後から声をかけられた。
「どうした?沙耶ならまだ講義中だよ?」
「うん、知ってる。今日は前田を誘いにきた」
「え?」
「ちょっと付き合ってよ」
そう言うが早いかぐいっと腕を引っ張って正門へと走るように向かう。
「ちょっ…!どこ行くつもり?」
引っ張られながら声を張らないと彼の耳には聞こえそうにない。
「ん?沙耶の興味のないところ」
「だから、どこ?」
場所によっては私だって行きたくないんだから。
「この間行ったクラブハウス」
「え?」
クラブハウスって、エマーティ大阪の?
「やっぱさ、サイン欲しいかな〜って思って。ねっ、付き合ってよ。沙耶は絶対に行かないだろうし」
「……うん、分かった」
そう返事をしたのは、もう一度彼の姿を見たいと思ったから。
あの日以来、彼のことが頭をよぎるから。
気になってるから。


