コンパス〜いつもそばで〜


試合は後半へと入り、何人かの選手が交代した。


「ヒデッ!」

フォワードの選手が味方選手の名前を呼んだ。

「ヒデ、ヒデッ!」

呼ばれているのは、今、ボールを持っている16番の選手。

パスを選択するのだろうか、それとも…


『ヒデ』と呼ばれた選手は、素早いドリブルでディフェンスを抜き、二人目のディフェンスをフェイントでかわし、切り替えしてフリーで中にクロスを上げた。


そこに走り込んできたフォワードの選手が頭で合わせてゴールネットを揺らす。


「おおっ!」

ゴール裏からは歓声が挙がり、拍手もパラパラと聞こえてきた。



「ナイス!ヒデ」

先ほどヘディングシュートをした選手と『ヒデ』がハグをした。


そうして見せた『ヒデ』の笑顔に、


「宮、下……くん?」

思わず溢した声は無意識で、高校の教室で授業中爆睡していた隣の席の彼の姿とかぶった。