「あ、桐原くん」
下駄箱でちょうど笠木と会った
「今、桐原くんのところに行こうとしてたの」
そんな声も無視して走る
無視というか俺の頭は泉でいっぱいでなんにも耳に入ってこない
はぁはぁはぁ
一心不乱に走っていつものファミレスに入る
はぁはぁ
そしていつものように目立っているカップル…
「おい」
はぁはぁはぁはぁ
息が上がって上手く話せない
こんな走ったのいつ振りだろう
「啓、お前走れたんだな」
「泉の名前出しただけでそんな必死になって、愛の力だね」
いいさ、いいさ
そうやってバカにしとけよ
「で、なに」
「で、なにじゃないわよ
あんた泉になんかしたわけ?」
「は?」
「泉が百人一首覚え始めてるのよ!」
百人一首??
「それがなんかあんの?」
「泉、なんか悩み事できたらすぐそういうの覚えるのよ
もう56首目なのよ!?
たぶん、なにも考えないようにしてると思うんだけど」
「その悩み事ってなんなわけ」
「バカじゃないの?
原因、あんたに決まってんでしょ」
「とぼける気かー!」
永司が野次を飛ばしてくる
こいつ…
「なに永司のこと睨んでんの」
そして永司は決まってドヤ顔
意味分かんねぇー
