「ほ~ら、もってきてやったよ」
美樹がそういうと急にバケツが飛んできた
-っ
瞬発的に目を閉じる
-バシャッ
ぇ……
あんまり濡れてない…?どうして?
恐る恐る目を開けると長い黒髪が目に入った。
「あっ綾ちゃ……卯月さん…」
綾ちゃんは一瞬悲しげな笑顔でこっちを見るとすぐ美樹たちの方を向いた。
「綾那っ何で庇うの?!綾那が一番の被害者じゃない!!」
そうだよ…綾ちゃん…庇われると自分が惨めになる…
「気安く『綾那』なんて呼ばないで…私はあなたたちと仲良くする気はない」
そういって笑いもせず涙を浮かべもせず真顔でこっちを振り向いた
「…東条さん、大丈夫?」
羽唯にハンカチなんて渡しちゃって馬鹿みたい…自分の方が濡れてるくせに……
「あ…あ、ありがとぅ…」
「御礼を言われる筋合いはない、私はあなたとも仲良くする気はない。こんな惨めな状況を見て見ぬふりをする自分になりたくないだけ」
綾ちゃんはそれだけ言って教室をあとにした。
「ありがとうっ!!」
聞こえてるかは分からない。でも、どうしても伝えたかった。
