戸部山くんが顎で差した先には大きな病院が建っていた。

その大きさに私は目を丸くする。

「ここ…が」

「うん。院長だからさ」

「い、院長!?」

「あれ、言わなかったけ」
不思議な顔をした戸部山くんは病院に向かって歩き出した。


「もしかして、このまま行くの!?」


「だって、痛いんじゃなかった?」


「そうだけど…さすがに…」

戸部山くんはチラッと私の表情を見て、ふぅと息をついた。

「別に平気だと思うけど。怪我して歩いてる方が親父、キレそう。」

「…。」


戸部山くんの有無を言わせない表情に私は自然と返す言葉が無くなった。

…なんか、戸部山くんはすごいかもしれない。


ほわっとそんな考えがうかんで頬を緩ませる。



「あ、こーくんお帰りなさい。あら、もしかして患者さん?」


いつのまにか病院のロビーにいて、私達の前には優しく微笑むナースさんがいた。

「げ。こーくんって呼ぶのやめろ、姉貴。」


…え。