「――――…。」

それからは、約2時間は

グラウンドから目が離せなかった。


試合が始まった瞬間にそのグラウンドを

纏う空気は張り詰めて。

ゴールが決まっては歓声に包まれて。

ボールが再び中心に戻ると、

また空気は張り詰める。


グラウンドの中で起きることは、

明らかに

その周囲の人の表情を変えていった。


ボールを操っているのは人であり、

人が何かをすることで、

人の表情を変えていく。

それは、

"あのこと"と重なるモノが有って。


私があそこに立ったら、

きっと錯覚する。

"あの瞬間"を思い出して。

"あの瞬間"に、

戻って来たのではないか、と。

きっと……錯覚してしまう。