「「「「……。」」」」

しん、としている暗闇の中。

私達は葉月君を待つ。


時刻は7時5分前。


《キィ…》

………来た。


「カナ?来てる?」

事務所の鍵は開いていたから、

葉月君は私が事務所に居るって

思ってくれるはず。


《カツッ…カツッ…》

上品な足音がする。


もう少し、前。

もう少し…もう少し…。


《カツッ…》

そこだ!


「……うおっ。」

葉月君がそこに立った瞬間、

部屋の明かりが一斉に付いて

床を照らす。


「葉月君。」

私は、驚く彼の名を呼ぶ。


葉月君は、私の方を見た。


「カナ?と、碧眞に、翡翠…優杏?」

葉月君が驚くのも無理は無い。


だって私達は…皆それぞれ

楽器を手にしているのだから。


翡翠君は何1つ言葉を発すること無く、

両腕を天に向けた。


《カンッカンッカンカンカンッ》

そして、始まりの合図を鳴らした。