「それより。

カナは、もう1度歌うんだよな?」

改めて葉月君に真剣に聞かれる。


「………う、うん。…歌いたい…。」

自分の想いを言葉にするのって、

こんなにも大変なことなんだなぁ。


「歌いたい。」ってこの一言のために、

私はどれだけの時間を

費やしてきたのかな。


「じゃあさ、会いに行かなきゃな。」


「え?」


「"ケイ"を支えてくれた人達に、

会いに行って、それからまた歌おう。」

………。


「でも、さ。

私…自分勝手に居なくなって…。」

今更、こんな私を受け入れてくれるの?


「どうせまた、

直ぐ辞めるんだろ。」とか、

「どうせ、気紛れに

やりたくなったんだろ。」……とか。


きっと、皆言うんじゃないかな。

私の姿を見て、"どうせ"、"どうせ"って。


「…確かに、事実を知らない人は多い。

じゃあ、

事実を知る人から少しずつで良い。

会いに行く。」


「………。」


「まだ言うことあるのかよ?

じゃあ、

始めに行きたいところ言ってみ?

カナを絶対に拒絶したりしねーから。」

始めに行きたいところ…。


鈴の家?ううん。もう行った。

時鶴の家?ううん。違う。

私が最初に行きたいのは。


「柚唯君、社長…の、所…。」

鈴と私の1番の支えになってくれた人。


私が事務所を辞めるまで、

時鶴が居ない所で私を守ってくれた人。


「じゃ、決まり。明日行くぞ。」


「うん。……って、え?」

あ、あ、明日??


「善は急げ、俺も行くから。」


「……う、うん…。」