「……カナ、落ち着いた?」


「…………う、ん…。」

泣きすぎた。頭が痛い。


「もう、座ろう…足疲れたし。」


「………ん。」

葉月君にお礼を言った後、

私は涙が止まらなくなってしまった。


「……ごめん。鬱陶しかったでしょ。」

すっかり腫れてしまったであろう

目元を擦りながら

私は隣に座る葉月君に言う。


あぁ、ちゃんと冷やさなきゃな。

明日ただでさえ小さい目が

もっと小さくなる。


「別に。今まで泣かなかった分だろ?

俺は、カナが俺の前で

泣いてくれただけで嬉しいから平気だ。

鬱陶しいなんて持っての他だな。」


「そ…そう?ありがとう…?」

何かこの人今、

凄くカッコいいこと言った?

そして、私は今の言葉を嬉しく感じた?


「カナは、歌ってる姿がよく似合う。」

私に優しく微笑みながら、

あなたは低くて甘い声でそう囁く。


「……っ、葉月君…

私の歌ってるトコ見たことあるの?」

声の美しさに少し怯んだけれど、

私はちゃんと会話を繋げる。


「………あぁ。」


「え、い、いつ?」

ライブに来てくれてたの?


「ん、秘密。」

………。

葉月君って、謎。