「じゃあ、葉月。またな。」

そう言ってこの人は歩き出す。

私はその後を着いていく。


………短かった。

もう少し、時間をくれると思ってた。

私の辛苦以外の時間は、とても短い。

それが、喜楽の時間であるのなら尚更。


この人との面識を知られてしまったら、

私はもう

Canzoneに居ることは出来ない。


彼らは優しく、

私を受け入れてくれるけど、

私はそれを受け入れることは出来ない。


葉月君に、Canzoneの1人に知られた。

"前の名"で、呼ばれるのを聞かれた。

それだけできっと、頭の良い葉月君は

私の"過去"知るだろう。


私は私の過去を知る人とは

音楽を共有出来ない。

出来る自信がない。

例え相手がどんなに上手くても、

どんなに下手でも。


私はもう、

Canzoneの曲を聴くことはない。